婚約指輪のルーツ

 人類最初の婚約指輪は、古代ローマ時代まで遡るといわれています。
材質は鉄で、恋人同士の愛の証としてはめたのです。
2世紀には金の指輪が登場します。
当時はシグニットリングと呼ばれ、男性は金の指輪を、女性はカメオの指輪を贈る習慣でした。
このリングを花嫁に与えることで、家事全般を取り仕切れる権利を認めるという意味があるとされました。
13世紀頃までは結婚指輪、婚約指輪の区別なしで、永遠に終わることのない円を、愛の象徴として花嫁に贈り、現在のように、エンゲージリング(婚約指輪)とマリッジリング(結婚指輪)に分かれたのは13世紀以降といわれています。

 史実に残る世界で最初の婚約指輪は15世紀にブルゴーニュ公シャルルの娘マリアと、ハプスブルグ家の王子マクシミリアン大公との婚約の際に贈られた指輪です。
Mの文字をかたどった指輪で、聖母マリアと、マリア、マクシミリアンの2人の結びつきを表しているといわれています。
マクシミリアン大公はその後、マクシミリアン1世となり、「近世のヨーロッパ王政史はハプスブルグの歴史だ」と言われた大帝国を欧州に築いたハプスブルグ家の土台を築いていったのです。
1456年、オランダ人のベルケムがダイヤモンドの研磨に成功してからは、ダイヤモンドつきの婚約指輪が王家の習慣となりました。
その後、ダイヤモンドの婚約指輪は時代とともにデザインを変えてゆきますが、一般に手の届くものではありませんでした。
一般家庭に普及したのは19世紀になってからで、プラチナのリングにブリリアントカットのダイヤモンドを支えたティファニー・セッティングが登場したのもこの時代です。


 日本で婚約指輪が普及したのは1960年頃だといわれています。
70年代になると婚約指輪の取得率は67%になります。
当時は真珠や誕生石の婚約指輪が主流だったようで、ダイヤモンドは全体の16%でした。
その後、ダイヤモンドの婚約指輪が飛躍的に伸びたのはテレビCMの効果でした。
「お給料の3か月分」というキャッチコピーとともに、日本人の男女モデルによるCMが流された1982年には、婚約指輪の取得率は79%。
そのうちダイヤモンドの婚約指輪は70%を占めています。
デ・ビアスが日本に対して行ったこのキャンペーンは見事に成功し、CMは時代に合わせ様々なカップルを描き続けます。
1984年には、お見合いで知り合ったと思しきカップル。
1988年と1990年は、弱い男性と強い女性の組み合わせ(今で言う、草食系男子と肉食系女子ですね)。
1992年と1994年には電車の中など日常的な場所でのプロポーズシーンで等身大のカップルを表現。
これらのCMは、「お給料の3か月分」というキャッチコピーは大きなお世話だとしても、描かれているシーンが心に残る見事なCMでした。
普段あまり目にすることのない「他人のプロポーズシーン」と、美しいダイヤモンドの指輪に日本中の男女が目を見張りました。
こうして、日本におけるダイヤモンドの婚約指輪は不動の地位を築いていったのです。